今度と化け物

あの日以来気になっていた。次が楽しみなような、借りを作って悔やむような、相反する気持ちがひっかかっていた。

おとといの夜中、革命戦士に起こされ、不意に決心した。

「そうだ、とりあえず、返そう」

昨日一日考えて、帰りがけに明日会いたい、そして返したいと告げ、夕方四ツ谷駅の橋の上で待ち合わせた。その人は橋の上ではなく、橋の端で待っていた。くたびれていたけれど、元気なふりをして、その人の待つ場所まで小走りで向かった。お茶でも飲むかと言われたけれど、座って話し出したら止まらなくなりそうだったし、私は土日は休みだけれど、その人は土曜日も朝早くから仕事だと知っていたから、店に入るのは止めにして、少し立ち話をした。

しばらくするとイグナチオ協会の時報が鳴ったので、それを合図に分れた。まっすぐ帰ろうかと思ったけれど、なんとなく遠回りをしてゆっくり歩くうちに、だんだんと暗くなって、家に着くころには、すっかり帳が降りていた。

そして、ぐったり疲れた。よかった。これで心残りをひとつ片づけた。

コロナのための自粛以来、もう体力がギリギリ。毎日の出勤が休みたいという気持ちとのたいへんなせめぎあい。また今度、と言ってわかれたけれど、今度と化け物には出会ったためしがない（はず）。