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いつかまた会ったら

毎朝、コンビニや駅の売店で、おむすびやサンドイッチと飲み物を買ってから会社へ行く。いくつかの店をローテーションのように、日々違うところに立ち寄っている。

会社に一番近い店が一番好きだった。だったと過去形なのは、ある時販売形態が変わってしまったから。それまで、店内で調理した独自の弁当などを売っていたのがお気に入りだったのだけれど、それを止めてしまったからだ。売り上げの関係か、経営者が変わったのだろうと想像した。毎日のように昼ご飯を買っていたのが、少し足が遠のくようになった。それでも、週に一度か二度は、朝か昼には行っていた。何人か、入れ替わったアルバイトらしき人はいたけれど、店長らしきその人はかわらなかったので、毎日元気に働く様子を見て、なんとなく日々の安心を得ていた。

昨日の朝、いつもどおりにその店で、飲み物などを手に取ってレジへ行き、いつの頃からか交わすようになった挨拶をすると、その人は言った。

「明日でお別れです」

あまりに唐突だったので、えっ?!と大きな声を出してしまった。

「代々木へ異動になったので」

と、具体的な地名を聞き、じゃあ、行かれないなーなどと、そっけないような、的を射たような外したような言葉を独り言のようにつぶやいてしまった。

会計を終え、お世話になりました、とお辞儀をひとつ。お世話というのは、変だなとは思っているうち、相手も同じようにありがとうございましたとお辞儀を返してくれた。

毎日は、同じ毎日は、永遠にずっと続くということはないのだと思って、なんだか気持ちが緊張した。

今朝、店をのぞくと、その人のいらっしゃいませという声が聞こえた。レジで、何時までいるのか尋ねると、昼前には出るとのこと、改めて、挨拶をし、お互いに、「お元気で」と言葉を交わした。

私は、その人のさらさらした長い髪がきれいだなと常々思っていたので、いつだったか、髪を短くしたとき、はじめて口をきいたことを思い出した。なぜ切ったのか、長い方がいいのに、というようなことを言ったと思う。その時は、その人は、私の突然の感想をいぶかしんだようだったけれど、今思えば、そのころから、おはようや、今日はひとりなの?、忙しいね、などと一言を交わすようになった気がする。

今日、その人は、あれから伸びた髪をまた短くしていた。新しい職場で心機一転のためかなと思ったけれど、もうそのことは言わずに置いた。

私に興味や関心の或る人などいないと思っていた。でも、毎日のように会う人が、私を私だと認識し、これから会わなくなることを告げてくれ、互いの健康を祈る会話をしてくれた。さみしい気持ちと一緒に、切ない嬉しさがこみ上げた。

代々木のどこ?とは聞かなかった。いつか、もしかして、偶然にその店に行くかもしれない可能性を、そのわずかな、ないかもしれない偶然の楽しみを、そっと、とっておこうと思った。

今日までありがとう。何年前に知り合ったかも覚えていない、毎日のように会った人。

これからも変わらぬ笑顔でいてください。どうぞ、お元気でお幸せに。

いつかまた会える日が訪れたら、また、今までのように、簡単な挨拶で、その日の健康を確認しよう。さよならは、言わなかったから。

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