諸行無常

おととい買ったアイスを、昨夜食べようとしたけれど、すっかり溶けていた。溜めていた氷は解けていないようだった。冷凍していた肉や野菜は、溶けているようで、冷凍庫内は、少し匂いがした。

念のため冷蔵室を確認すると、やはり冷えていない様子。

ああ、ついに冷蔵庫が壊れたか。一人暮らしを始めてから二代目の冷蔵庫。二十年以上の毎日を支えてくれた。当たり前にそこにあった存在と、また別れの時がやってきてしまったか。

今朝、再度冷凍庫を見ると、作りかけの氷は、解けかかっていた。ダメ元で、コンセントをさしなおし、スイッチも入れなおして、出勤した。

酒を止めよということか。持ち物を整理し始めよという啓示か。もはやあきらめて、冬の寒さを利用できる間は、冷蔵庫無しの生活をしようかと思い始める。冷蔵室の方には、特に傷むような食べ物もないので、今日食べるものを今日買って、食べきってしまえばよい。

飲み残しの酒を呑むために、氷を買って帰る。冷凍庫を確認。溜めていた氷も解け始めていた。

溶けかかった氷をグラスに入れて、飲み残しの酒を呑みだすと、パチン、と音がする。

冷蔵庫の方からだ。数分ごとに、小さく、けれど確かにパチンと鳴る。

何かの合図か。電源を切る方がいいのかな。

そういえば、先週だったか、部屋を移動しているとき、なんとなく、冷蔵庫が壊れたらどうしようと思った。その思いが通じてしまい、もう引退すると決心したのかもしれないね。いやいや生きてる私に付き合うのに、うんざりしてしまったのかもしれないね。

これまで私と私の大切な者たちを助けてくれて、支えてくれてありがとう。もうしばらくは、保存場所として、一緒にいてね。長いこと、ありがとう冷蔵庫。ご苦労様。そして、何もしてやれなくてごめんね。